USB変換器を用いた微量酸化物試料の酸素含有量測定法の開発

山形大学 大学院理工学研究科 神戸 士郎

おもな成果
 微量な酸化物試料の酸素量をクーロメトリ法を用いて測定するシステム「マイクロクーロメトリシステム」を、USB変換器を用いて開発した。システムの心臓部のORP電極、陽極、陰極は、山形DKK(株)との共同開発で、大きさを従来の1/10に小型化した。この電極を組み込んで試作したのがマイクロクーロメトリシシテムである。Cuイオンの酸化還元電位の変化を、USB変換器を介してPCに直接記録し、微量酸化物(5mg程度)の酸素量測定が可能であることを実証した。
高まる酸素含有量測定の需要
 ナノテクノロジー研究の進展とともに、微量分析のニーズが高まっている。この理由としては図1に示されるような超伝導磁気センサ(SQUID)、EL素子に使われるITO、ZnO、ガスセンサのSnO2などにナノ材料・薄膜、単結晶などの微量酸化物試料が使われていることが上げられる。これらの品質は、試料の酸素量によって大きく変わるが、これまで微量酸化物試料の酸素量を測定することは難しかった。現在の酸素量分析法では、加熱型分析では1g、クーロメトリ分析で100mg、ヨードメトリ分析でも20mg程度の試料が必要で、ナノ材料・薄膜・単結晶微量試料などへの応用は困難であり、この分析機器分野の発展のネックとなっており、微量試料における酸素量分析法が求められてきた。
切り札のマイクロクーロメトリ法
 クーロメトリ法は、比較的簡単な実験装置で測定ができ、溶液に流入した電子の数量から計算を用いて反応量が求められるため測定誤差が少なく精密な測定が行えるメリットがある。しかし、微量試料の分析は困難であった。50mgの試料における測定方法は確立しているが、これでは、バルクや粉末試料でしか測定が行えない(図2)。この原因の一つとして、反応セル中の試料濃度の低下が考えらる。そこで今回、5mg以下の微量試料において測定を行うために、従来の300ml反応セルを小型化した30ml反応セルを用いた「マイクロクーロメトリシステム」を製作した(図3)。この装置の心臓部とも言えるORP電極と陽極・陰極は、従来サイズ品を使用することができない。そこで、高い技術をもつ山形ディーケーケー株式会社(新庄市)と共同開発を行った。従来のものと比較して先端が細く、小型反応セルにも挿入が可能な電極が完成し、セルの10分の1の小型化に成功した。
USB変換器で精度と効率が大幅アップ
 さらに、高速のデータ読み込みとグラフ表示を可能にするUSB変換器を山形DKK(株)と産学官連携研究で開発した。従来、10秒間隔でデータ取り込みを行っていたが、USB変換器を使うことによって1秒間隔でデータ読み込みが可能となり、実験の精度向上と大幅な効率アップが図られた。
5mgの酸化物の精密酸素量測定に成功
 マイクロクーロメトリシステムを用いて、微量酸化物の酸素量測定を行った結果、5mgの酸化物試料で±0.02の高い精度で酸素量測定に成功した。超高圧合成試料や厚膜の酸素量測定を可能にする成果である。今後1mg試料での酸素量測定法の設計・開発を進める。 本研究を進めるに当たり、山形県産業技術機構ニューウェーブ研究創出事業による援助を受けた。心より感謝する。本研究のさらに詳しい内容は、Fumiaki Sato, Masaaki Fujihara, Naokazu Komiyama, Shiro Kambe, and Osamu Ishii, Applied Physics Letters, 87 (2005) 264106-1~3に掲載されているので参考にされたい。